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Groundwater

Work Text:

 カスミアを見てるとむずむずするんだ。胸の奥がむずむずして、なにかせずにはいられない気持ちになる。
「どうしたKID。浮ついてるな。なにか感じるのか?」
 そう、そうだな。感じるさ。でもフォースの予感じゃなくて、別のなにか。コンテナを掴む指も別のなにかを掴みたがってむずむずしている。こんなふうに硬いものじゃなくて、もっと有機的なもの、実のあるなにか。温かくて確りしたもの。しなやかに動く、命。──お前もそんな気持ちになることはある?
 荷物を留め終えたカスミアに、大丈夫かと左頭を掴まれた。
 ああ、むずむずする。
 大丈夫だけど大丈夫じゃない。
 ずっと変なんだ。お前が俺の悪夢を止めるために隣で寝てくれるようになってから。
 彼の手が、頭じゃなくほかの場所に触れることを想像する。肩とか腕とか手首とか。だって、一緒に寝ている時のお前は俺に触れたがっている。髪に指を差し込む以外の方法で俺を慰めたがって(本当はちょっと違うけど他にいい言葉が見つからない)いることを、感じるんだ。お前は決して頭以外に手を伸ばしてこないけど、でも、だから、かえってむずむずするんだ。何故って──俺はそうしてほしいと思ってるから。
 そうか。俺は彼に触れたいのか。
 じゃあ、どこに? どこに触れたい?
 そうだな、彼が生きていることが解る場所がいい。命の流れている場所。どこで触れる? 手なんかじゃこのむずむずはおさまらないだろう。もっと距離のない場所で触れなければ満足できないだろう。俺は知りたいんだ。身体がむずむずするのは何故なのか。そんな時どうしたらいいのか。お前の力、強く血の流れているところ。鼓動の位置。胸の奥にある、やわらかいお前の秘密を。
 コンテナに飛び上がり首筋に噛みついた。
 驚く声と共に斜め上から息が吹きつける。彼の呼吸器は、やっぱりひれの後ろだったんだ。カラランについて俺はひとつ知った。軽く圧すれば歯の下に感じる脈が強くなる。命の動き。彼の大きな身体を流れ彼を生かしている温かい水脈。
 カスミアの血は何色だろう? それが外へ流れ出ている光景なんて、一生眼にしたくはないんだけれど。
「……なにしてんだ、お前は」
「……俺もわからない」
 ただ。
 むずむずするんだ。お前を見てると。
 こういう時どうしたらいいのか教えろよ。
「いいかげんにしとけ」
 ため息が吹きよせ頭を押しやられた。
 カスミアは、やっぱり頭以外には触れなくて、俺は、むずむずがちっともおさまらない。

                                      了